気仙沼での暮らし方 コラム#2-6 海のまちで暮らすということ

海のまちで暮らすということ

 

「せっかくだから、もう少し遠くまで行ってみっか」と、

やっくんは漁港からどんどん離れるように船を進めた。

乗せてもらった船にはお立ち台のようなスペースがあり、ここは何に使うのかと尋ねると、「船に乗せた人が、ここに乗ったら景色良くて楽しいでしょ。だからつけたんだ」と言う。

やっくんは、人を喜ばせるのがうんと好きなのだ。

ブオオオとスピードを上げて進む船。

後ろを振り返ると、さっきまでいた作業場が小さくなっていく。

風を切る。跳ねる波飛沫を見つめる。景色がどんどん変わっていく。海の上は、こんなにも気持ちがいいのか。

大島と気仙沼市内をつなぐ鶴亀大橋が近づいてくる。
初めて下から見上げた橋は、やけに堂々としているように見えた。
橋をくぐる瞬間、遊園地に来た子どものようにはしゃいでしまった。

港に帰ってくる頃には、胸がこれでもかというほどいっぱいになっていた。
私は海の上が好きなのかもしれない。

 

photo by asami iizuka

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